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出現 Apparition


         出現

月は悲しんでいた。熾天使たちは涙して、
楽弓を指に、おぼろげな花々の静寂のなかで夢見て、
もの憂げなヴィオルから花冠が群れる蒼穹に滑りこむ
清らかなすすり泣きを引き出していた。
━━その日だった、きみの初めてのくちづけは祝福された。
私の夢想は私を好んで苦しめ、
後悔がなく苦い後味がなくても、夢の収穫が
夢を摘み取った心に残している悲しみの
香りに訳知りで酔っていた。
それで私は彷徨っていた、古い舗石に目をしっかり向け。
その時、髪に日の光を受け、通りで
夕方に、きみは笑いながら現れた。
私は輝く帽子の妖精を見たと思った。
遠い昔、それは甘やかされた子供だった私の美しい
眠りの上を通り過ぎていた。軽く握った両手から
香る星々の白い花束をいつも雪と降らせて。


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